企業年金連合会が発行する「月刊企業年金」2026年9月号にリタイア・シフトの連載をしているが、第4回として「60歳から65歳への「リタイア・シフト1.0」がなぜ、低賃金歳雇用の発想に至ったのか」が掲載されている。60歳から65歳へ、引退年齢を5歳シフトさせる取り組みが2000年代に入って行われた。これはいわば「リタイア・シフト1.0」とでもいうべき取り組みだったが、うまくいったとは言いがたい。その流れを振り返っている。

書籍「リタイア・シフト」からこの図を使っているが、団塊世代が60歳にたったときの「空気」が読み取れる統計である。すなわち「人材は十分に足りている」「団塊世代の人件費が引退で軽くなるほうが助かる」という当時の世相である。引退年齢を引き上げるとき、この前提はまったくうまくない。そのため、国は部分年金を用いて段階的に受給開始年齢を引き上げることと、雇用継続給付を用いて賃金減少の影響を食い止めること、そして一律の定年延長を断念し継続雇用をよしとすること、の3点を選択せざるをえなかった。

結果として、「低賃金・低処遇・低モチベーション」の3点セットが「リタイア・シフト1.0」の基本となってしまったわけだ。これに加え、当時の60歳代前半が必ずしもフルで働く体力を有していなかったことも3点セットの成立に影響してしまった。
これらが現在の世相とまったく異なることは言うまでもない。なにせ、人材不足の面だけでも当時とまったく様相は異なるからだ。現在の「リタイア・シフト」が、当時の「リタイア・シフト1.0」と社会背景としてどう異なるかは、翌月の記事とする予定である。


