ABEMAプライムのレギュラーコメンテーターで、PRESIDENTの書評者も務めている河崎環さんから書評をいただいた。書評提供をしようとした媒体がうまく見つからなかったとのことで、書評原稿をFacebookにアップされていた。本人の了解を得たのでこちらにシェアしておく。
『R E T I R E S H I F T(リタイア・シフト)人生100年時代の引退戦略』
山崎 俊輔(著)/東洋経済新報社 単行本 – 2026/7/21発行国や会社サイドによって一律に引退時期を決められる時代が終わり、自分で「辞め時」を決められる「リタイア・シフト」時代が到来した——。本書はそんな社会の一大変革を高らかに宣言することから始まる。
慢性的な人材不足から企業は高齢者雇用をますます積極化し、60代後半や70代に対してまだ働いてほしいと頭を下げる。ところが国の年金は65歳からもらえるため、「いつ辞めるか」の決定権は会社側から会社員の側へ移り、会社員は「条件次第で決めよう」と強気に出ることができるのだ、という。
「自分で辞め時が決められるなんて、そんなにうまく行くものかね?」。世の中すべてまず疑念から入り、信じることに抗いがちな、私のような「失われた30年」にボコボコにされた陰キャの懐疑主義者が半笑いで読み進めると、そこにはなかなか説得力ある論理展開が待っている。
国際水準に比して、現代の70代日本人が十分労働に適するという身体及び認知の若さを示すデータ。しかしかつての日本社会は、人材余剰感と人件費圧迫から「60歳からの継続雇用は低賃金」を正当化し、高齢社員を非戦力化するという過ちを犯した。
年金受給開始年齢の引き上げと、団塊世代の大量引退と、2010年ごろの不景気が企業に許してしまった「4割減(以上)低賃金再雇用モデル」。再雇用とはそういうものだ、現役時の半額だ、とまるで常識化してしまったその低賃金モデルは、日本の高齢者から生きがいと労働姿勢への自律性を奪い、大量の“無能な老害”(引用カッコ“”内は書籍著者ではなく筆者河崎の表現)へと追いやってしまった。
日本人の人口が急激に先細りし、AIにはできないヒューマンな労働の需要と価値が高まる中、同じことを下の世代にも繰り返す”人間の労働力の浪費”はもう許されない。高齢労働者の処遇を改善して貴重な国内労働人口の質を担保し、少子高齢社会へ適応するためには、企業と労働者がいわば日本人の労働人生観をリセットし、一人ひとり自律的な引退戦略を立てることが必要だ。
本書で具体的に提示されるのは、各自がそれぞれイメージする労働人生に即した引退戦略。話題のWPP理論による遅いリタイアや、40代FIRE /リトルFIRE /サイドFIRE、おひとりさま向けのギリギリまで働く引退戦略など、しみじみ読み込んでしまう個人解像度の高いマネーライフ提案は、たくさんの人生を見てきた手練れのファイナンシャルプランナーならでは。


