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最低賃金1,500円はシニア就労を変えるか-処遇改善の効果と就業拡大の限界 |ニッセイ基礎研究所

今回はシンクタンクのレポートを紹介する。ニッセイ基礎研の、最低賃金1,500円はシニア就労を変えるか-処遇改善の効果と就業拡大の限界である。執筆者は坊 美生子さん(生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任)である。

最低賃金の引き上げが、単にシニア(特に年金をもらえる60歳代後半以降)の世代の就労拡大につながるとするのは早計だとするが、まさに「リタイア・シフト」の世界で起きつつある現象であろう。年金をもらえることと、健康上の制約が高まることから、あえて働かないという選択肢は強くなる。それでもなお、人材不足社会においてシニア世代に働いてもらいたいなら、最低賃金をみた待遇ではなくもっと多くの給与を支払う正社員雇用とするか、お金の問題ではない高い働きがいを感じさせるか、企業の腕の見せ所となる。後者は「バイトだけど、仕事は楽しい」を提示することには限界もある(最終的には個人側の問題なので)。定年の延長および、高度な業務内容を踏まえた継続雇用制度(もちろんバイト扱いの賃金ではなく)が解決策としてありうるが、さてどうだろうか。

(要旨)
近年、男女ともにシニアの就業率が上昇し、企業も人手不足への対応としてシニア採用を重視している。一方、最賃近傍雇用者の約4人に1人は60歳以上である。本稿は、政府目標である「最低賃金全国平均1,500円」が達成した場合、シニアにどのような影響を及ぼすかについて、処遇と労働量(就業者数と就業時間)に分けて検討する。
まず国勢調査からシニアの職業を性・年齢階級の違いに着目して分析すると、継続雇用が多い60代前半では事務職や販売職が多いが、65歳以降は清掃、警備、運転、調理などの比重が高まる。これらの職業の多くは、短時間労働者の1時間当たり所定内給与額が平均1,500円未満であり、シニアが低賃金になりやすい構造が分かった。「最低賃金1,500円」が達成されれば、これらの職業に就くシニアへの所得底上げ効果は大きいだろう。ただし、シニアの労働量の押し上げ効果は限定的になる可能性がある。
シニアが現役世代と異なるのは、働く目的が多様なことである。年齢が上がるほど、収入だけではなく、健康、生きがい、社会参加、能力発揮などを重視する割合が高まり、就業時間も短くなる傾向がある。収入以外が目的のシニアにとっては、賃金が引き上げられても就業行動は大きく変化しないだろう。寧ろ、「年収の壁」と「年金の壁」(在職老齢年金制度)によって、就業を抑制するシニアもいると考えられる。
従って企業にとっては、賃金アップだけではなく、シニアの働く意欲を高める雇用管理や、働き続けやすい環境を整えることが重要だろう。例えば身体的負荷を減らす設備や機械の導入、柔軟な働き方の整備、役割付与とコミュニケーション、適正な評価などである。最低賃金の引上げと、シニアの雇用管理・就業環境整備を両輪として進めることが、シニアの就業拡大と継続につながるだろう。

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