パーソル総合研究所は「リタイア・シフト」に関連するいろんなリサーチを行い情報発信を行っているが、「「正社員として20年以上勤務した60代」の就労実態調査 」というデータをみつけた。2025年2月掲載のものだ。
本調査が興味深いのは「正社員として20年以上勤務した60代」というグルーピングをしていることだ。つまり会社で40~50歳代を過ごした正社員の60歳の働き方を見ていることになり、「長年お世話になった会社でもう一働き」という前提がある場合、シニアの働き方をどう選択するのか、またどう理解しているのかが読み取れるデータだ。
正社員として20年以上勤務した60代前半の就業率は95.8%、60代後半の就労率は89.3%であり、同年代全般を対象にした総務省「労働力調査」(2023年)の74.0%、52.0%よりも著しく高い。
(略)
60代に対する人事評価制度の適用状況を見ると、60代前半の継続勤務者であっても適用率は61.2%に過ぎず、60代後半では47.5%と5割を下回る。
(略)
60代に対する昇給・昇格や賞与査定制度の適用状況適用率は、60代前半の継続勤務者であっても49.9%に過ぎず、60代後半では40.8%。転職者では60代前半・後半とも4分の1ほどに過ぎない。
まず、継続雇用で働き続ける割合が95%と極めて高いことが示されている。一方で、人事評価から外れる割合が高いこともはっきり出ている。正社員として引き続き働かない場合、基本的に社内の人事評価から外れ、これは昇格昇給から外れ、どんなにがんばっても給与や賞与に影響しないことを意味する。
処遇の変化による「自分の価値」の感じ方を尋ねたところ、給与・賞与が下がった人のうち、「自分の価値が低下したように感じた」では、「あてはまる」が60代前半は49.0%、60代後半も40.8%。「会社員としてのキャリアが終わったように感じた」でも、同様の傾向があり、60代前半で43.4%、60代後半で34.6%。給与ダウンしていない人の数倍であり、給与ダウンの有無で自分の価値やキャリアの認識が大きく異なる。
(略)
処遇の変化による「モチベーション」の変化を尋ねたところ、給与・賞与が下がった人のうち、「仕事のモチベーションが下がった」では、60代前半が56.7%、60代後半で45.6%。「会社に対する忠誠心が下がった」では、60代前半が46.2%、60後半で34.3%。 給与ダウンしていない人の数倍であり、給与ダウンの有無でモチベーションと忠誠心が大きく異なる。
(略)
職場で「自分の役割を重要だと感じている」人は、60代前半の継続勤務者や60代前半・後半の転職者の正社員等でも半数に達せず、パート・アルバイトでは4割未満にとどまる。
処遇を変えたことは、シニア世代の自己評価を大きく下げ、かつモチベーションを失わせている。給与を下げていない場合との比較で2倍以上の差がつくというのは大きなダウンといえる。当然の帰結として、職場での自分の役割は軽いものと考えることになる。

(分析コメント)
今回の調査では、企業側の視点として、60代が自社の中核業務を担う基幹戦力人材として機能しているかというと、疑問が残る結果になった。(略)
60代前半の継続勤務者を基幹戦力人材扱いしていない様子が見てとれる。従業員側に自覚を促す以前に、企業側が60代の位置づけを見直すこと、そして、個々人に対する役割期待を明確に定め、本人とすり合わせる枠組みが必要だ。(略)
安易に年齢基準へ逃げることなく、役割に応じて個別に是々非々の処遇見直しを行う必要がある。
まとめとしてパーソル総合研究所の指摘は重い。「リタイア・シフト」の時代にシニア世代を軽視している企業は、彼らのやる気を損なっていることで、戦力として活用しきれていないことを強く訴えている。シニア世代の役割認識が低いと指摘しつつ、その根幹は、会社の対応にあるというわけだ。その通りである。モチベーションダウン、エンゲージメント低下も、一律に60歳代を賃下げ、人事評価対象外とする会社の処遇のほうに理由があるのではと指摘している。
「リタイア・シフト」は個人の問題であると同時に、企業の問題である。

